特集

近代化への道-20世紀初頭の韓国 特集 5 開化期 そして100年後

朝鮮は、1876年の日朝修好条規による開港から、儒教的な秩序の崩壊と共に急激な社会の変化を伴う開化期を迎えた。それから1世紀が過ぎた今、韓国は文化的なグローバル化の荒波の中で、第2の開化を迎えている。100年前の外部の圧力による受動的な開化が、日本による統治につながった屈辱とは異なるものだ。新開化期を迎えた韓国の文化的な潜在力は、デジタル・ネットワークを通じて能動的に開花している。

ニューヨーク国連本部・信託統治理事会の会議場で開かれたユニセフの新しい青少年アジェンダ「ジェネレーション・アンリミテッド(無限の可能性を秘めた世代)」の発表行事で、BTS(防弾少年団)を代表して演説するRM(2018年9月24 日)。世界の青少年に「自分自身を語ろう」というメッセージを送り、大きな反響を呼んだ。 © 朝鮮日報o

韓国の大衆文化コンテンツを象徴する2018年のハイライトは、人気テレビドラマ『ミスター・サンシャイン』だ。このドラマはアメリカ、フランス、日本の艦隊が相次いで押し寄せ、開港を迫った19世紀末の朝鮮を舞台にしている。当時、そうした勢力から国を守るために戦って命を落とした名も無き義兵にスポットライトを当てて、深い印象を残した。しかし、このドラマが大きな意味を持つ理由は、西欧の新文物が流入したことで朝鮮社会が経験した亀裂、様々な階層での意識変化が、義兵の闘争と共にバランスよく描かれている点にある。

もちろん、これまでにも開化期を扱った映画やドラマはあったが、ほとんどは日本への抵抗に関する内容だった。それに対してこのドラマは、漢陽(現在のソウル)の街に建てられた西洋式のホテル、フランスのパン屋、日本の居酒屋、洋装店などが再現され、そこで繰り広げられる近代式の労働や恋愛といった日常が描かれている。特に、名門の士大夫(両班)の娘である女性主人公は、破格といえる行動を見せる。大胆な性格の女性主人公は、家同士が決めた婚約者がいるにもかかわらず、それを拒否して、ユジン・チョイと恋に落ちる。ユジン・チョイは、奴婢だったがアメリカに密航して海兵の将校になり、漢陽駐在の公使館に派遣された人物だ。また、賤民の猟師から射撃を人知れず教わり、銃を持って親日勢力を狙撃するスナイパーとしても活動する。このように人に決められた人生ではなく、自ら開拓して人生を選ぶ女性主人公を通して、視聴者は主体的で能動的な開化期の女性像を見出すことができる。

ソウル蚕室オリンピック主競技場で2018年8月に開かれた BTSのコンサートを収めた映画『BTS World Tour: Love Yourself In Seoul』のワンシーン。『Burn the stage: The movie』に続く 2作目のBTSコンサート・ドキュメンタリー映画で、2019年1月26日に95カ国3800スクリーンで同時公開された。 © ビッグヒットエンターテインメン

大韓帝国の末期をコンセプトにしたレトロな写真を撮影する大邱・山格洞の写真館。2017年のオープンから爆発的な人気を呼び、ソウルと釜山にも進出した。若い人たちのレトロ・トレンドを代表するホットプレイスとして有名だ。 © Studio Sankyeok

新開化期に求められるコンテンツ
『ミスター・サンシャイン』には、もう一つの象徴性が秘められている。それは、このドラマの時代背景から100年ほど経った今、デジタル・ネットワークによってつながる文化的グローバル化時代に求められるコンテンツの定形だ。この作品は、制作費として約430億ウォンが投じられ、放送開始前に制作を終えていた。韓国の零細なドラマ制作システムでは、想像もできなかっただろう。それを可能にしたのが、総制作費の7割を投資したグローバル・プラットホームのネットフリックスだ。その結果、韓国と同じタイミングで世界の人々が視聴できるドラマが作られたのだ。今後、韓国のドラマコンテンツの制作・消費方法も、完全に変わっていくだろう。

今、韓国の大衆文化コンテンツ制作業界は、転換期を迎えている。すでに視聴者は、ネットフリックスやユーチューブなどグローバル・プラットホームを通じて、全世界で生産されるコンテンツをリアルタイムで共有している。このような状況の中、韓国の文化ビジネスは、グローバル市場に向かうか、あるいは国内市場にとどまるか、判断・決断しなければならない「新開化期」に差しかかっているのだ。

そのような観点で『ミスター・サンシャイン』を見ると、このドラマの時代背景が意味深く思われる。グローバル市場には、それにふさわしいコンテンツが求められる。開化期という時代背景は、韓国の歴史を基にした特殊なテーマであると同時に、海外の視聴者も普遍的に理解できる魅力がある。韓国の開化期が生み出した自由、平和、恋愛へのロマンチックな願いは、国籍や人種を超える普遍的なテーマなので、視聴者層と共感を広げることができたのだ。

開化期は、激しい文化の衝突が繰り広げられる特殊な時期で、想像力を働かせるのに最適だ。例えば、ウエスタンのジャンルを韓国ならではの方式で解釈したキム・ジウン(金知雲)監督の『グッド・バッド・ウィアード』も開化期が舞台で、重層的な時代が許容する想像力によって映画の面白みと完成度が高まった。そのため、今後グローバル市場で注目を集める文化コンテンツは、朝鮮半島において近代への扉が開かれた開化期を舞台にする可能性が高いだろう。

新しいグローバル・スタンダード
現在、新開化期の様相を見せている端的な例は「BTS(防弾少年団)」だ。短期間でグローバル・アイドルグループへと成長したBTSは、すでに新開化期の重要なアイコンになっている。この7人組のボーイズ・グループは、国と民族と言語を超えた「ARMY(アーミー)」と呼ばれる世界的なファンクラブでも有名だ。ユーチューブなどグローバル・ネットワークのニーズに応え、世界的なブームを巻き起こした秘訣は、踊りと音楽という人類共通の資産だ。

興味深いのは、BTSブームと衝突した前時代的な反発が存在する点だ。日本の一部の右翼団体が、BTSのメンバーのジミンが着ていたTシャツを「原爆Tシャツ」と呼んで、嫌韓感情のターゲットにした。彼らは、紅白歌合戦のような日本の人気番組に韓国のアイドルを出演させてはいけないと主張した。しかしBTSは、IT時代のグローバル・ネットワークを通じて全世界にファンがおり、前時代的なテレビ番組への出演はそれほど重要ではない。一部の日本の右翼の反発は、グローバル時代の文化環境において時代錯誤だと知らしめ、日本のBTSファンを刺激することで結束を強めることになった。

つまり、こうした出来事によって、新開化期に求められる新しいグローバル・スタンダードの存在が確認されたのだ。新開化期のグローバル・スタンダードには、国や地域など前時代的な概念を超え、人類が共有・共感できる価値が盛り込まれている。対立や競争よりも、その枠を超えた自由、平和、共存の価値だ。BTSの全世界のファンは、自発的に次のような広報を行った。「ジミンが着ていたTシャツは『原爆Tシャツ』ではなく『光復(解放)Tシャツ』で、平和を象徴している」。そうした動きは、グローバルな価値とは何かを物語っている。

新開化期のグローバル・スタンダードには、国や地域など前時代的な概念を超え、人類が共有・共感できる価値が盛り込まれている。対立や競争よりも、その枠を超えた自由、平和、共存の価値だ。

2018年に大ヒットしたテレビドラマ『ミスター・サンシャイン』の公式ポスター。大韓帝国時代の義兵にスポットライトを当て、能動的な女性像を表現している。西洋式のホテル、パン屋、洋装店など近代的な建物や日常も興味深く描かれた。 © スタジオドラゴン

ニューメディア時代の挑戦
私たちは今、グローバル時代の独特な文化を消費することで、新開化期の変化を目撃している。イギリスのロックバンド「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリーの人生に焦点を当てた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が昨年、韓国で巻き起こしたブームも良い例だ。この映画は、これまでヒットした音楽映画の記録を全て塗り替え、クイーンの本場のイギリスよりも大きなブームになった。その理由として、座って受動的に鑑賞するだけでなく、一緒に歌って楽しむ「シング・アロング上映(応援上映)」という新鮮で独特な鑑賞文化を挙げることができる。

今やコンテンツは、創作者が作って需要者が完成させるものだ。BTSの公演がファンの合唱で完成するように、『ボヘミアン・ラプソディ』という音楽映画も観客の熱い反応で完成する。新開化期の文化消費は、このように国や言語を超え、それを受け入れる集団によって新たな意味を持つ。

一方、放送によってスターになった芸能人が、今度はニューメディア・プラットホームのクリエイターに挑戦する逆転現象も起きている。グローバルな文化環境では、人気芸能人よりも大図書館、ベンツ、シンニムなどスター・ユーチューバーの方が、大きな影響力を持っている。最近、ユーチューブで有名になったクリエイターがテレビや広告に登場し、それとは逆に芸能人が個人放送に挑戦している。これは、旧メディアからニューメディアへの権力の移行を物語っている。

IT時代のニューメディアが生んだデジタル・ネットワークは「グローバル文化の時代」という新開化期をもたらしている。韓国で100年ほど前に迎えた開化期の経験を踏まえると、現在の新開化期における選択は、重大で明確な事案だ。すでに扉は開かれており、向かうべき道もはっきりと見えている。韓国の文化を守ると同時に、グローバルで普遍的な価値を目指さなければならない。それが、新開化期を迎えた私たちの挑戦だ。

チョン・ドキョン 鄭徳賢、大衆文化評論家
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