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エンターテインメント 韓国型
ゾンビの誕生

たいてい現実的なテーマを好む国内の映画観客の傾向からすると、最近話題となっているゾンビコンテンツの反響は目新しい現象である。特に若い観客から人気を得ているこの手のドラマや映画は、一つのジャンルとして位置付けられているというにはまだ早いが、解釈や表現方法のユニークさから、一部の海外プロデューサーたちの関心を集めている。

これまで多くの韓国の映画ファンは、ゾンビ映画を少数のマニアだけが楽しむB級ジャンルとして認識してきた。そのせいか世界の映画ファンから完成度の高い映画として評価された『アイ・アム・レジェンド』(2007)が、韓国では観客動員数246万人に止まった。さらに、ブロックバスター級のゾンビ映画『ワールド・ウォー Z』(2013)も、約530万の観客動員数に止まった。そんな中で2016年、ソンビ映画に対する韓国観客の認識を一変させた話題作が登場した。観客動員数1,150万人を突破した『釜山行き』は、いわゆる「韓国型ゾンビ映画の誕生」の幕上げを告げ、海外からも関心を集めた。

世界的な動画配信サービス大手 Netflix (ネットフリックス)が、今年1月公開したドラマ『キングダム』は、韓国国内より海外でより人気を集めた。背景に登場する朝鮮の自然風景、宮殿と城郭など、韓国の伝統的な空間が海外ファンの興味を引いた要因とされている。 © Netflix

風変わりな解釈
この映画が大成功を収めたのは、ゾンビを解釈する独自の視点によるところが大きい。『グエムル-漢江の怪物』(2006)以降、『ヨンガシー変種増殖』(2012)、『風邪』(2013)と続いてきた韓国のパニック映画は、きちんと対処できない政府システムに対する批判的な観点を盛り込んだ手法が、観客の共感を呼んだポイントとなった。『釜山行き』も、ゾンビの拡散を効果的にコントロールできない社会システムに代わって、市民たちがゾンビとの闘いに打って出ざるを得ない状況を描いている点では、さほど変わらない。

ところが、この映画に登場するゾンビたちは、どことなく可哀相な存在のように描かれている。最初は完全に異質な「他者」として登場し恐怖心を煽るが、やむを得ない状況によりゾンビと化してしまった「我々の一部」なのかもしれないということに気づき、観客は彼らを憐憫の対象としてとらえることになる。まさにこの部分が「韓国型ゾンビ」というユニークな特徴である。

『釜山行き』には、韓国の現代史がオーバーラップする。映画の舞台である釜山行きKTX列車は、右肩上がりの成長を遂げた「スピードコリア」を象徴する空間として受け止められる。密閉された列車内を群れをなして移動するゾンビは、民主化を求めて街を埋め尽くした市民たち、2002年日韓ワールドカップの沿道の応援者たち、さらには軍部独裁時代の軍人たちの姿がゾンビに重なって見える。

ゾンビを違う観点で再解釈しようとした試みは海外映画にもあった。『ウォーム・ボディーズ』(2013)の主人公「ゾンビR」は、偶然に出会った美しい少女・ジュリーを他のゾンビたちから必至で守るキャラクターとして描かれる。このような新しい視点は、ゾンビ映画の実質的な元祖と言えるジョージ・A・ロメロ監督の1968年作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降、ずっと続いてきたゾンビ映画の典型的なプロットとは一線を画している。これは他者を差別的な視線で見ていた20世紀の考え方から脱し、共感と包容の目で見る21世紀型の考え方を示しているものといえる。

2018年10月に公開された映画『猖獗』(チャングォル)は、興行成績は芳しくなかったが、韓国伝統の時代劇とゾンビを融合させたことによって、韓国型ゾンビ映画の幕開けとなった。 © Next Entertainment World

飢えに苦しむ百姓のもう一つの名
2018年に公開された映画『猖獗(チャングォル)』は、ゾンビを登場させたものの、朝鮮時代を背景にしたという点でユニークな企画だった。この映画は、まず「韓服を着たゾンビ」という風変わりな見所がポイントである。ところが、そのような視覚的な背景より興味深いのは、ゾンビそのものについての再解釈である。映画は朝鮮のある港に停泊していた外国商船で初めて発生したゾンビが、王が居住する宮殿にまで広がるという設定。この映画のあらすじは無能な王が、実権を振り回す臣下の機嫌をうかがって危機にきちんと対処できない。混乱に付け込んで王位簒奪を試みる臣下の思惑に対抗するため、清から帰ってきた王子が世の中を救うという内容だ。

『猖獗』で目立つのはゾンビ化した民衆と権力者の対比である。この映画は、朝鮮を脅かす存在は、飢えに苦しみ襲いかかるゾンビではなく、歪んだ欲望に囚われた権力者だというメッセージを投げかける。ゾンビが貧しい百姓のもう一つの名として再解釈されたわけだ。

ゾンビを飢えに苦しむ百姓としてとらえた見方は、2019年1月ネットフリックスを通じて世界に配信されたキム・ウンフィ(金銀姫)作家のドラマ『キングダム』にもつながる。金作家は、この作品について「全体的なテーマは飢えだと決めてからシナリオを書いた」と明らかにした。2018年11月8日と9日、シンガポールのマリーナベイサンズでネットフリックスが新作オリジナルコンテンツ17作品を紹介するイベント「See What's Next: Asia」が開催された。その場でこのドラマの第1話と第2話が紹介され、一般に配信する前からアジア地域の記者たちから良い反応を得た。また、シーズン1が配信される前にシーズン2の制作が始まった。ネットフリックスの創立者兼CEOであるリード・ ヘイスティングスは、「韓国で作られたこの作品が世界で人気を博すると確信する」と評価した。

ネットフリックスが韓国型ゾンビもの『キングダム』に投資する理由は、この作品が持つフュージョンの要素が、同社が目指す政策と相通じる面があるためだろう。ゾンビという普遍的なジャンルの中に韓国ならではの解釈と情緒を溶け込ませたこの作品に注目する理由である。さらに、この観点はグローバルコンテンツ市場に、韓国の作家やプロデューサーたちがどのように参入すればいいかについてのヒントになるかもしれない。

チョン・ドキョン 鄭德賢、大衆文化評論家
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