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宅配サービス-急成長するデリバリー業界の実情と課題 特集 4 漫画になった現場の物語

インターネットで注文した商品は、多くの人の手を経て配達される。満載のトラックから 配送品を降ろす荷降ろしも、その一部だ。筆者は去年、6年間の宅配現場での経験を基に、 漫画『カデギ』を出版した。

ポリ出版社から2019年5月に発売された漫画『カデギ』。著者イ・ジョンチョル(李宗哲)氏が、自身の宅配アルバイトの経験を基にして描いた作品。韓国社会の現実と文化を物語る独特な素材とテーマによって、ドイツのライプチヒ・ブックフェア(2019年)で注目された。

経験なし
私は地方の美術大学を卒業して、小さい頃から夢だった漫画家になろうと、当てもなくソウルに上京した。親から生活費の一部を仕送りしてもらっていたが、ソウルで暮らすには全く足りなかった。漫画家デビューはともかく、まずは生計を立てるためにバイトをするしかなかった。毎日5~6時間働いて、残りの時間は漫画を描くのに充てたかった。そんな時、午前だけ働ける宅配会社の荷降ろし・荷積みのアルバイト募集が目にとまった。きつい仕事かもしれない…。少し迷ったが、仕事場が家から近く、時給が最低賃金よりも2~3千ウォン高かったので、電話した。担当者が、明日からすぐ働けるかと聞くので、大丈夫だと答えた。私の「宅配アルバイト人生」は、そうして始まった。

顧客が注文した商品は、いくつかの過程を経て配達される。商品はまず、注文を確認した販売店によって梱包され、契約を結んだ宅配会社のドライバーによって集荷場に運ばれる。そこで、大きなトラックに載せ替えられ、宅配会社の中央物流センターに集められる。センターでは一晩中、各集荷場から集まってきた配送品が、配送エリアごとに仕分けられる。次に、荷積みのアルバイトがエリアごとに配送品を載せ終えると、トラックは明け方にセンターを出発する。各エリアの支店では、荷降ろしのアルバイトがトラックから配送品を降ろすと、宅配のドライバーがそれぞれのトラックに積み込む。

私の最初のバイト先は、宅配会社の支店だった。支店長は、初日に「カデギ」をしたことがあるかと聞いた。耳慣れない「カデギ」という言葉は、荷物のトラックへの積み下ろしを指す現場の用語だ。一度もないと答えると、支店長は一緒に働く他のアルバイトを紹介してくれた。白髪交じりの50代半ばの男性だった。話し方は無愛想だったが、初めて仕事をする私に一から詳しく教えてくれた。その人は私の名字だけを聞いた。肉体的にきつい仕事だからか、人の入れ替わりが激しいため、あえて名前を聞かなかったのだろう。その人は私を「イ君」と呼び、私は「ウおじさん」と呼んだ。

そこでは、様々な人と一緒に働いた。韓国プロサッカー・Kリーグの3部でゴールキーパーだった元スポーツ選手。警察の公務員試験の勉強をしている受験生。若くして結婚し半導体工場で働いているが、生活費が足りなくて、パートで働く若い一家の大黒柱。公務員として30年働いて定年退職したおじさん。父親を亡くし、病気の母親を養う40代半ばのカデギ班長…。皆それぞれに事情があった。

「カントン」と腰用サポーター
私とウおじさんは、支店に到着したトラックから荷物をベルトコンベヤーに降ろす作業をした。ベルトコンベヤーに荷物を載せると、そばにいる宅配のドライバーが担当エリアの配送品を持っていく。11トントラック1台に700~800個の荷物が載っていて、多い時は1000以上になる。二人一組で、1日平均トラック4~5台分の荷降ろしをした。盆や正月が近づくと、支店に来るトラックが格段に増えた。トラック1台から荷物を降ろすのに40~50分かかった。1台分を降ろし終えると、足がガクガク震えた。「カントン(缶)」と呼ばれるトラックの荷室は風通しが悪く、作業を始めると埃で喉と鼻が詰まって、全身汗だくになった。なぜ最低賃金より時給が2~3千ウォン高いのか、理由が分かった。午前7時から始まった仕事は昼過ぎに終わり、宅配のドライバーはようやく配達に向かった。

仕事をしていると、自然に宅配ドライバーとも親しくなった。彼らは朝7時から夜遅くまで働いた。繁忙期には配達が追い付かず、午前0時を過ぎることもあった。配送品1個当たりの歩合給は1000ウォン以下で、生計を何とか立てていた。ドライバーは配達の出発時間を早めたいため、仕事の合間に休みたい荷降ろしのアルバイトと、時には言い争うこともあった。

宅配会社の支店は、作業場がほとんど屋外にあるため天気に左右されやすく、暑さと寒さに耐えながら働いた。秋になると秋夕(チュソク、日本の盆に相当)を控えて「宅配ラッシュ」が始まる。その年に収穫された新米などの農産物、白菜の塩漬けなど冬に備えたキムチ類が、産地から大量に送られてくるからだ。そのたびに、私たちは腰用のサポーターをして、何とかしのいだ。

ウおじさんは、その宅配会社の支店をやめて、ソウル郊外の農水産物市場で夜間に野菜を運ぶ仕事に移った。私も、一緒にその市場で働くことにした。そこで働いている時に、私はある出版社から子供向けの漫画の連載の依頼を受けた。私がウおじさんにその話をすると、自分のことのように喜び、二度とここに来るなと言った。私は、そうすると答えた。しかし、漫画の連載だけで生計を立てるのは、なかなか難しかった。別の宅配会社でまたカデギの仕事を始めたが、ウおじさんには言わなかった。「イ・ジョンチョルという若い男がいたけど、今では一人前の漫画家になった」と、私のことを記憶にとどめてほしかったからだ。

それぞれの事情
仕事は思った以上に大変だったが、得るものもあった。様々な人と出会えたことだ。韓国プロサッカー・Kリーグの3部でゴールキーパーだった元スポーツ選手。警察の公務員試験の勉強をしている受験生。若くして結婚し半導体工場で働いているが、生活費が足りなくて、私と同じようにパートで働く若い一家の大黒柱。公務員として30年働いて定年退職した後、宅配会社の支店に出勤するおじさん。父親を亡くし、病気の母親を養う40代半ばのカデギ班長…。皆それぞれに事情があった。

バイトの期間が長くなり、周りの人たちと親しくなると、そうした切ない事情を漫画として描きたいと思った。そこで、現場での経験を書き残し始めた。そこで働く人たちの物語を漫画で伝え、応援して励ましたかったのだ。そうした気持ちで、2019年に漫画『カデギ』を出版した。

世界中が新型コロナウイルスで苦しむ中、宅配サービスが注目されている。非接触で、欲しい物をいつでもどこでも手に入れられる時代。だが、荷物の数が爆発的に増え、宅配ドライバーが過労で倒れたという記事も目にする。段ボール箱には「取扱注意」など様々なシールが貼られている。「投げないでください」、「ひっくり返さないでください」、「壊れやすい物が入っています」…。私はある時、人にもそんなシールを貼ることができれば…と考えた。それで、私は誰かに会うと、こんな挨拶をする。「心も体も、いつも破損に注意してください!」

イ・ジョンチョル 李宗哲、漫画家
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