生活

ライフスタイル パックご飯から有名シェフの料理まで

初期の頃には、一人暮らしや共働きの主婦が主な顧客だった家庭簡便食の消費層が拡大している。最近では、家庭でも高級料理を手軽に食べたいと思う美食家たちと、新型コロナウイルスの感染拡大により外食を避ける人々まで加わり、加工・食品産業が急速に進化している。

インスタント食品市場の始まりは、1996年に発売されたパックご飯だ。初期には消費者にそっぽを向かれていたが、現在は様々な種類のパックご飯がコンスタントに売れており、海外への輸出量も増えている。 © CJ第一製糖

ある日、会社から帰ると家のドアにチラシが一枚貼ってあった。そのままゴミ箱に捨てようとしたが、「お惣菜を配達します」という文句に目が行く。チラシには多彩な惣菜で構成された一か月分のメニューが小さな写真付きで紹介されており、その中のいくつかを選んで申し込めば自宅まで配達してくれるという。

「一度、注文してみようか」

気持ちが動いた。子供のいない共働きの夫婦が食卓に座って一緒に夕食を食べるのは、週末を除けば週に2、3回、それも二人のうちの一人の帰宅が遅くなる日には外で食べたり、チキンやピザのデリバリーに依存していた。最近では新型コロナウイルスの感染拡大のせいで外食を控えるようになり、仕方なく家庭で食事をしなくてはならないが、毎回デリバリーメニューにするというわけにはいかないので、インスタント食品もよく利用していた。二人で食べる量もさほど多くないので、食材を大量に買って冷蔵庫の中で腐らせてしまうよりは遥かに合理的だと感じる。また、家事労働の時間を減らしてくれるので、私のような働く女性にとっては非常に合理的なアイデアだ。

多種多様なインスタント食品が並んでいる陳列台の前で、消費者が商品を選んでいる。韓国人の食生活でチゲと汁物、タン(湯)は欠かすことのできない食べ物だが、材料の準備が面倒で手間がかかるとして、主婦には大きな負担となっていた。最近では、簡単に温めるだけというレトルト食品が多数販売されており、主婦の家事労働時間を画期的に減らしている。© ニュースバンク

電子レンジで温めるだけでよいRTH(Ready to Eat)商品 © マムスタッチ

最近、インスタント市場で最も人気のある商品は、レストランメニューだ。有名レストラン食べ歩きで美食を楽しんでいた人々が、新型コロナウイルスの拡大によって外出が制限されるようになり、人気店のメニューを家で簡単に楽しめる方法を求めるようになったのだ。

パックご飯の登場
家庭簡便食を一度も購入したことのない家庭はほとんどないだろう。家庭簡便食はインスタント食品の一種で、加工・包装された食物を簡単な調理をするだけで、すぐに食べられるので便利だ。その種類もかなり豊富で、レシピは4種類に分けられる。調理なしにそのまま食べるRTE(ready to eat)、加熱後に食べるRTH(ready to heat)、簡単な調理後に食べるRTC(ready to cook)、加工された食材で簡単に料理してから食べるRTP(ready to prepare)などだ。最近ではRTC, RTPタイプのミールキット(料理セット)に人気が集まっているが、何か料理をしたという気分にさせてくれるからだろう。

ニルスンコリアとWhat’s nextグループが2018年に発表した『韓国人の食生活調査』によると、一人暮らしは週3回、二人以上の世帯は2回インスタント食品を購入するという。また市場調査会社のユーロ―モニターによると、国内のインスタント市場規模は、2014年の1兆210億ウォンから昨年は1兆9500億ウォンに成長し、2024年には2兆9150億ウォンに達するものと推定される。

この市場を最初に開拓した商品はパックご飯だった。1996年にパックご飯が初めて発売された時には「ご飯を買って食べる人間などいるか」という反応がほとんどだった。ご飯は家で炊いて食べるものという固定観念が強かったのだ。有名モデルがCMに登場して、その便利さをいくら強調しても「パックご飯は健康に良くない」という考えをくつがえすことはできなかった。今日のようにパックご飯が食生活に根付くまでにはかなりの時間が必要だった。加工食品に対する抵抗感がだんだんと減少し、最近スーパーでは多種多様なパックご飯が売られている。それだけではなく各種、汁もの、チゲ、惣菜類など様々なメニューが開発され、インスタント食品だけで食卓を埋め尽くすことができるほどだ。

下ごしらえされている食材を簡単に調理して食べるRTP(Ready to Prepare)商品は、料理をしたような気分が味わえる。特に、一流シェフたちの参加による高級ミールキット商品は、グルメにも人気だ。 © CJ第一製糖

ソウルの大型スーパーで男性消費者が、陳列されているインスタント食品を見ている。初期の頃には、一人暮らしや若い共働きの主婦をターゲットにしていたインスタント食品市場だが、今では、調理済みのものを買って食べることに否定的な見方をしていたシニア層にまで、消費が広がっている。 © 聯合ニュース

有名レストランの料理
初期のインスタント食品は韓国料理が主流をなしていたが、最近では「プレミアム」商品に進む傾向にある。CJ第一製糖のインスタントブランドは、一流ホテルの厨房で10年以上働いた経歴をもつ13人のシェフが、メニューを研究開発している。最近の若者が好きなスペイン料理、エビのアヒージョをはじめパッタイ(ライスヌードルを炒めたタイ料理)、親子丼などグローバルメニューまで多種多様な構成となっている。ミールキット市場に比較的早く参入した韓国ヤクルトもまた、シェフの料理を家庭で楽しめる点を売りにしている。このブランドは、数年前から国内のスターシェフのシグネチャー(特性・看板)メニューで構成された商品を出しており、最近では家庭で料理するのが難しい羊肉料理まで発売し、食マニアのあいだで好評を得た。

最近のインスタント市場で最も人気のある商品はレストランメニューだ。有名なグルメな店を訪れ美食を楽しんでいた人々が、新型コロナウイルスの感染拡大により外出がままならず、有名レストランの人気メニューを家庭で簡単に楽しめる方法を求めているからだ。有名レストランの代表メニューであるだけに味は保証され、衛生面での信頼性も高く利用者が急増している。食材だけでなくインスタント食品の配送にも強い通販サイト「マーケットカーリー」の分析によると、2020年上半期のレストラン加工食品の販売量は、前年同期より175%増加したという。「マーケットカーリー」にはカルビタン、マクチャン(牛の胃袋)、冷麺、ベトナム料理のフォー麺など全国の有名専門レストランが多数入店している。



ミレニアル世代のライフスタイル
インスタント市場がこのように拡大している理由として、一人暮らしと共働き家庭の急増とともにミレニアル世代のライフスタイルにも言及する必要がある。ミレニアル世代とは、だいたい1980年代から2000年代に生まれた人々のことを言い、彼らが結婚適齢期になって誕生した「ミレニアル家族」に注目する必要がある。彼らのライフスタイルを説明する重要なキーワードの一つが「効率性」だ。ミレニアルたちは自分で美味し料理を作りたいが、材料の下ごしらえや買い物など時間のかかる面倒な手順は省きたい。このような要求が半調理済み食品や時短食材を選択させている。特に、材料がすべてパックされて宅配されるミールキットは、不便さをあまり感じることなく、料理の楽しみも適当に味わえる。

一方、家の重要性がだんだんと高まっている点も、インスタント食品市場の成長を牽引する要因だ。新型コロナウイルスの感染拡大の長期化により、家が仕事をする空間、学習の空間、趣味生活の空間など、すべての生活のプラットホームとなっている。家の中にホームシアターを設置し、映画館に負けない映像とサウンドを楽しんだり、ホームトレーニングのための空間を別途に作ったりする。家で食事をするほかない状況で、インスタント食品は外食の気分を出すための代案となっている。すき焼き、鮭やまぐろの醤油漬け、中華のヤンジャンピ(洋張皮の雑菜)のような材料の準備に手間のかかる面倒なメニューも、同封されているレシピカードに書かれた順序どおりにすれば、下ごしらえされた適量の食材で、簡単に調理を楽しむことができる。

初期のインスタント食品は手軽さと価格競争力が強調されたが、最近では消費の主体が一人暮らしから二人以上の家庭に拡大しており、さらにはシニア層まで広がる勢いで、価格もやや高めの高級メニューもよく売れている。今後は乳児のための離乳食や病人のための流動食など、多様な領域に拡大する可能性もある。インスタント食品が簡単な一食の次元を越えてどこまで進化するか注目される。

チェ・チヘ 崔智恵、ソウル大学校消費トレンド分析センター研究員
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