生活

遠くの目 韓国の政治と芸術の関係に関して思うこと

8月28日、日本の安倍総理が突然の辞任を発表した。依然として日韓関係が悪く、また新型コロナウィルス感染症も両国で再び拡大している中、安倍首相の辞任発表は両国で驚きを持って迎えられた。

ところで、両国の政治文化を比較してみると、大変対照的であることが分かる。韓国国民たちは自らの要求を直接に政府にぶつける傾向があり、そういう意味でデモ文化が発達している。その中心地は、現在はソウル光化門広場である。

しかし1987年の民主化運動の後は、一時期、国会議事堂に近いヨイド(汝矣島)広場が政治的大集会のメッカであった。ヨイド広場では、主催者側の発表で100万人を越える大集会が幾度も行われた。そこでは政治集会だけでなく、宗教団体や他の団体の大規模な集会が行われたりもした。韓国政府は、1997年からヨイド広場の公園化事業を推進し、1999年1月にヨイド広場はヨイド公園となった。政治的集会を規制するのが目的だったようである。ところがその後、大集会のメッカはソウル市庁前広場とそれにつながる光化門広場、さらには江南の検察庁前道路などに移っていった。

印象的だったのは、2002年日韓共同ワールドカップが開催されたときだった。ソウル市庁前広場に大型スクリーンが設置され、30万∼40万という人々がそこに集まって韓国戦応援を繰り広げたのである。当時、韓国には日本の「ウルトラニッポン」のような「赤い悪魔」というサッカー応援団が結成されていて、彼らが国内でも大集団の応援を手助けしていた。韓国戦の当日にソウル市庁前広場に行けば、「必勝KOREA」という文字の入った赤いTシャツやハチマキなどを配っていた。応援したい人たちは皆、そのTシャツやハチマキを身につけて、声の限りに「大韓民国!」を叫んだ。

当時は、私が大学で教えていた学生たちも、授業を早く終えてソウル市庁前広場に行きたがった。早く行かないと場所がなくなるというのだった。当時、学生たちの熱心さにはずいぶん驚かされたものだった。私も様子を見に幾度かソウル市庁前広場に足を運んだが、すでに広場は人で埋め尽くされており、私は少し離れたところから大型スクリーンを眺めるしかなかった。このころ、政治的な大集会はスポーツを中心とした大集会に変貌していた。

しかし政治的大集会は、2016年に朴槿惠大統領に対する弾劾を要求する大規模な「ろうそく集会」と、それに対抗するいわゆる太極旗デモとなった。そこでは様々な芸術的パフォーマンスが繰り広げられていた。「ろうそく集会」は以前から行われていたが、2016年に一時150万人を越える韓国史上最大のデモに発展していった。そして「ろうそく集会」は暴力事件がいっさい起らないという平和的な政治集会のモデルになった。このように、韓国では人々が直接参加する形式の集会文化が発達している。

2020年5月16日、5.18民主化運動記念日前夜祭ミュージカル看板の前で。

5.18民主化運動記念日前夜祭のミュージカル参加場面。

今年の5月16日に私は、全羅南道の光州を訪れた。5月18日に行われる光州民主化運動の前夜祭として行われていたミュージカルを観るためだった。脚本を書いた作家が知り合いで、大変話題になったミュージカルだったので、わざわざソウルから観に行くことにしたのだった。そのミュージカルは、1980年に起きた5月18日を中心とした光州市民と鎮圧軍の対峙を題材にしたものだった。そして途中で観客たちがミュージカルに参加するシーンがあった。新型コロナウィルス対策のため、観客数は制限され、皆マスクをつけていたが、私も含めてほとんどの観客たちがミュージカルに飛び入りで参加した。皆、1980年5月18日の光州市民となって、導かれるままに演技したのだった。

私にとって、参加するミュージカルははじめての体験だった。はじめは戸惑いながらの参加だったが、次第に私自身も熱心に演技をし、終わったあとには久々にすがすがしさを味わうことができた。体を動かしながら、多くの人たちとの連帯感を感じられたからであろう。その時、これは韓国の歴史的な文化であり、政治と芸術を結び付けた文化なのだと感じた。

韓国の政治集会には、ゲンガリなどの楽器を持ってパフォーマンスを行う人たちが必ずといっていいほど登場する。韓国の民衆芸術や演劇、民衆音楽などには、歴史的に政治を風刺するものが大変多かった。したがって韓国では芸術は風刺という意味で政治が素材となっていた。政治と芸術は別と言われるが、韓国では関連のあるものが多い。なぜなら歴史的に韓国では士(ソンビ)となるためには、詩作の才能や一つぐらいの楽器を演奏できることが求められたからである。そうして知識だけでなく、文学と音楽の才能があるものが中央に進出したのである。政治と芸術が歴史的につながりあってきた韓国では、それが土台となって今も政治に芸術が入り込む余裕があるのだと思う。

保坂祐二 ほさか・ゆうじ、世宗大学校教授、政治学専攻
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