特集

宅配サービス-急成長するデリバリー業界の実情と課題 特集 5 韓国型 デリバリー産業 その光と影

新型コロナウイルス感染症の影響で、非接触型のライフスタイルが全般的に普及する中、デリバリー産業が注目を集めている。飲食店のモバイルオーダーという単純なアプリ機能にとどまらず、多彩な品目にサービスの範囲を広げており、デリバリー代行サービスを提供するプラットフォームが急成長している。一方で、独占的な企業の登場やプラットフォーム労働者(個人事業主の配達員)の処遇が問題になっている。

韓国の電子商取引(オンラインショッピング)の取引総額は2018年、初めて100兆ウォンを超えて114兆ウォンを記録した。その中で、フードデリバリーは4.6%に過ぎなかった。しかし、統計庁の最新の「オンラインショッピング動向調査」によると、今年上半期のオンラインフードデリバリーの取引総額は、毎月1兆ウォンをはるかに上回っている。4月だけでも前年比で83.7%増加し、取引額で1位の飲食料品(12.7%)、2位の家電・電子・通信機器(11.5%)に次いで3位(10.5%)になっている。

もちろん、このような成長は、新型コロナウイルス感染症の影響が大きい。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保のため外食が急減し、その代わりにフードデリバリーが増えたからだ。モバイルデータ・リサーチ会社「オープン・サーベイ」の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大で外出を控え、フードデリバリーサービスを利用するようになったという回答が、40~50代の利用者で7割近くを占めている。これまでフードデリバリーを好まなかった同年齢層の新規利用は、大きな意味を持つ。業界では、スマートフォンのデリバリーアプリの利便性を経験した消費者が、新型コロナウイルスの終息後も、料理だけでなく他の商品もオンラインで注文し続けると見込んでいる。

ソウル市内の宅配会社の物流センター。新型コロナウイルスの感染拡大によって非接触型の消費が急増する中、配送エリアごとの荷物の仕分けが、忙しそうに行われている。配達員の過労と労働環境が、新しい社会問題になっている。© 聯合ニュース

サービス品目の拡大
モバイルアプリを基盤とした韓国のデリバリー・プラットフォームは、現在のコロナ禍の前から、フードデリバリーの成長を牽引してきた。アップルの「iPhone」が2007年に登場して以来、デリバリー・プラットフォームはモバイルでチャンスをつかみ、成長し始めた。チラシなどの広告を見て電話で注文する従来の方式から、モバイルアプリで注文する方式へと急速に移行したのだ。デリバリー・プラットフォームは、飲食店のオーナー向けに有料の広告優先表示プランを販売したり、利用者から注文1件当たりの手数料を受け取るなどの方法で収益モデルを作った。

韓国外食業中央会の調査(2019年3月)によると、飲食店のデリバリー注文のうち62.2%がスマートフォン・アプリによるもので、電話は37.5%に過ぎなかった。消費者への調査でも、同じような結果が出ている。オープン・サーベイが今年、全国の20~59歳の男女1500人を対象に調査を行った結果、およそ6割がフードデリバリーのウェブサイトやスマートフォン・アプリでサービスを利用しているという。

デリバリー・プラットフォームは、それぞれの方法で飲食店と消費者の双方に多彩なサービスを提供しながら競い合っている。特に、注文の際に料理代と配達料を一緒に先払いする決済システムが、消費者に好評だ。注文した料理を配達員から受け取る際に、現金やクレジットカードで決済する従来のキャッシュ・オン・デリバリー(着払い)から、新型コロナウイルスの流行後、先払いへと急速に移行している。さらに、配達員と会わずに済む「玄関前への置き配」も、注文オプションとして普及している。

もう一つの大きな傾向は、サービスカテゴリーの拡大だ。これまでは調理された料理(中食)のデリバリーサービスが中心だったが、最近は菓子やインスタントラーメンなどの加工食品、ミネラルウォーター、トイレットペーパー、洗剤などの日用品、そして果物、野菜、肉類など冷蔵・冷凍が必要な生鮮食品・調理食品まで、数多くの品目が対象になっている。例えば、韓国1位のデリバリー・プラットフォーム「配達の民族」を運営する「優雅な兄弟たち」は、2019年にオープンした「Bマート」で、スーパーに並んでいる商品ならほとんど扱っている。2位の「ヨギヨ」と3位の「配達通」を運営する「デリバリー・ヒーロー・コリア」も、各地のコンビニエンスストアや大型スーパーと提携して、デリバリー品目を大幅に増やしている。

一方で、飲食店向けに食材や包装容器などの資材を供給するなど、事業を拡大するデリバリー・プラットフォームも増えている。飲食店のPOSシステムを開発・供給する事業者も相次いで登場している。

一般人の配達員を確保して、デリバリー代行サービスを提供する「ブルン・フレンズ」のデリバリー用自転車。地下鉄駅のそばに、きれいに停められている。デリバリー代行会社は、登録されている専業の配達員だけでは殺到する注文に追い付けないため、一般の人からも配達員を募集している。© オム・ジヨン(厳智鎔)

独占と競争
今まで韓国のフードデリバリー市場は、2強体制だった。1社は、2010年6月に「配達の民族」をスタートした韓国企業「優雅な兄弟たち」。もう1社は「ヨギヨ」を起業し、「配達通」を買収したドイツ法人「デリバリー・ヒーロー・コリア」だ。デリバリー・ヒーロー・コリアは、ヨギヨのサービスを法人設立の翌年(2012年)から始め。2014年に韓国初のデリバリーアプリ「配達通」(2010年4月開始)を買収し、シェアを一気に高めた。

2020年を起点に、この2強体制に大きな変化が予想されている。デリバリー・ヒーロー・コリアが2019年12月、優雅な兄弟たちの買収計画を発表し、韓国のデリバリー業界に激しい地殻変動が起きようとしている。両企業の買収・合併が韓国公正取引委員会の「企業結合審査」をパスすれば、業界1~3位を傘下に置くシェアを99%の巨大なデリバリー・プラットフォームが誕生することになる。このような独占的なプラットフォームの誕生をめぐって、激しい論争が繰り広げられている。加盟店側は、過度な手数料や広告料などの談合を懸念しており、消費者側は配達料の引き上げに神経を尖らせている。

優雅な兄弟たちが「買収・合併後も、デリバリー・ヒーロー・コリアと優雅な兄弟たちは、変わることなく独立的な経営と競争を続ける」と急遽釈明したが、論争は収まっていない。さらに、独占を防ぐため、地方自治体の主導で公共デリバリーアプリの開発・サービスが始まっている。

また、韓国1位の電子商取引プラットフォーム「クーパン」の「クーパン・イーツ」、「ウィメプ」の「ウィメプ・オー」が、フードデリバリーサービスに進出することで、市場の勢力図の変化にも関心が集まっている。

フードデリバリー・プラットフォーム「配達の民族」、「ヨギヨ」、「配達通」のアプリのデザイン(左から)。モバイルビッグデータ・プラットフォーム企業「IGAワークス」が、Android OSを対象に調査した結果、配達の民族が利用者数970万1158人で1位、ヨギヨが492万6269人で2位、配達通が27万2139人で4位だった(2020年6月現在)。配達通は、2010年のサービス開始から3位を維持してきたが、今年の上半期に「クーパン・イーツ」が39万1244人と上回った。

しかし一方では、増加するプラットフォーム労働者について、懸念する声も聞かれる。法的に権利が保障されない労働者を数多く生み出しているためだ。
韓国の法的な基準では「特殊形態勤労従事者」に当たるので、業務中の事故や会社とのトラブルから身を守ることは難しい。

デリバリー代行サービス
デリバリー・プラットフォームが成長する中、韓国のデリバリー産業において、もう一つの注目すべきキーワードは「デリバリー代行サービス」だ。第1世代のデリバリー・プラットフォームは、飲食店と消費者の仲介をするだけで、物流ネットワークは持っていなかった。そのため実際の配達は、店のオーナーが自ら料理を運ぶにせよ、アルバイトを雇うにせよ、飲食店が行うしかなかった。しかし、フードデリバリーは通常、昼、夕方、深夜の時間帯以外は、ほとんど注文がない。そのため、配達員を雇った飲食店は、暇な時間をチラシの配布など広告に充てていた。

そうした状況に注目して登場したのが、デリバリー代行サービスだ。飲食店は、デリバリー代行会社に毎月10~15万ウォンの管理費と注文1件当たり3000ウォンほどの配達料を支払って、デリバリーサービスを委託する。つまり、配達員の雇用による支出と損失が、配達を外注することで軽減できるのだ。デリバリー代行会社の起業が盛んに行われた2013年頃までは、店による配達員の雇用と代行会社への外注を共に利用する飲食店が多かったが、最近は外注するケースが増えている。韓国では現在、センガクテロ(月間注文件数:1000万件)、パロゴ(980万件)、メッシュコリア(400万件)の3社が市場を牽引している。競争が激しいため、純利益を出している会社はまだないが、3社とも急成長している。

優雅な兄弟たちとデリバリー・ヒーロー・コリアも、それぞれ「配民ライダーズ」と「ヨギヨ・プラス」を設立して、デリバリーネットワークを構築している。デリバリー・ヒーロー・コリアは、パロゴにも200億ウォンを投資した。これは、物流能力の拡充を狙った動きだと考えられる。配民ライダーズとヨギヨ・プラスは物流サービスも提供するため、手数料が従来のデリバリー・プラットフォーム(6~12%)よりも高い(15~30%)。上記のクーパン・イーツ、ソウルの江南(カンナム)地区を基盤とするデリバリー・プラットフォーム「ティンドン」、ヨギヨが買収したデリバリー・プラットフォーム「フードフライ」も、同様のモデルを基盤として成長してきた。今では、物流機能を有する第2世代デリバリー・プラットフォームが主流だ。

ソウルの江南(カンナム)のコンビニエンスストアで、注文された商品を受け取って、目的地に向かうブルン・フレンズの配達員。デリバリーの需要が急増し、最近ではコンビニエンスストアの商品も、主な対象品目になっている。このコンビニエンスストアは、午前11時から午後11時までデリバリーサービスを行ってきたが、今年4月から24時間体制に切り替えた。© ニュースバンク

プラットフォーム労働者
第2世代デリバリー・プラットフォームの登場と共に、韓国でも「プラットフォーム労働者(個人事業主の配達員)」の問題が、社会的な関心を集めている。このシステムは、専業の配達員だけでなく、一般人も配達員として取り込んでいる。パロゴの「パロゴ・フレックス」、メッシュコリアの「ブルン・フレンズ」、優雅な兄弟たちの「配民コネクト」などのサービスが代表的だ。クーパン・イーツは、設立当初から一般人の配達員を確保している。デリバリー代行会社に登録されている専業の配達員だけでは、料理の配達が遅れるなど、殺到する注文に追い付けないためだ。

主なデリバリー・プラットフォームは、注文が集中する大都市に限って、人手が足りない時間帯に、クラウドソーシングで一般の人から配達員を集め始めた。各社は、一般人の配達員も、好きな時に好きなだけ働けるとアピールしている。また給与は、専業の配達員の3000ウォンより少し高く、1件当たり3500~4000ウォンほどとなっている。反応は上々だ。優雅な兄弟たちによると、配民コネクトの登録配達員数は、2020年2月現在で1万4730人に達している。配民ライダーズの配達員が約2300人なので、その7倍に当たる配達員を短期間で確保したことになる。

しかし一方では、増加するプラットフォーム労働者について、懸念する声も聞かれる。法的に権利が保障されない労働者を数多く生み出しているためだ。韓国の法的な基準では「特殊形態勤労従事者」に当たるので、業務中の事故や会社とのトラブルから身を守ることは難しい。労働法によって保障される四大保険(国民年金、健康保険、雇用保険、労災保険)や有給休暇なども適用されない。そのため最近、新型コロナウイルスの感染拡大によってデリバリーの需要が急増する中、プラットフォーム労働者の劣悪な労働環境が改めて注目されている。さらに、そうしたモビリティ・プラットフォーム配達員の労働基本権も社会的な問題になっており、彼らの権利を守るために制度改善を求める声が高まっている。

オム・ジヨン 厳智鎔、バイラインネットワーク記者
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