生活

韓国大好き 世界の映画ファンに韓国映画を紹介

十代の頃に偶然観た一本の韓国映画が縁で、アイルランド生まれのピアース・コンランさんは韓国にやって来た。そして自らの情熱を注げる大好きなことを職業にすることができた。 彼は今、全世界の韓国映画ファンのために映画を制作し、紹介文を書き、批評をする。

1年に800本ほどの映画を観るというピアース・コンランさんは、最も好きな作品としてポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』をあげる。彼が韓国で活動する契機となった映画でもある。

ピアース・コンラン(Pierce Conran) さんが観た最初の韓国映画は、一目ぼれという十代の初恋ものとは違っていた。DVD店で目を引くタイトルと華やかなカバーにつられて手に取った作品は、「面白くて人気沸騰している」日本映画かな思っていた。しかし、彼が手に取ったのはパク・チャヌク監督の復讐三部作の第1作『復讐者に憐れみを』だった。

「映画は暴力的で残忍だと思いました。いったいどう理解すればよいのか分かりませんでした」と彼は言う。「正直に言えば非常に嫌で、会う人ごとに偶然に観たこの映画について話して回るようになりました」。

しかし、映画は彼の神経を刺激し続けた。数週間後には、彼は再び観ないではいられなくなる。「突然その映画が気にいるようになりました」と彼は記憶をたどる。「映画をもう一度観ると、目的や意図があるということが分かりました。監督が意図したことをきちんと受け取ったとまでは言えませんが、もう少し観なくてはと思うようになりました」。韓国に対する拒否感と好奇心を同時に感じながら、彼は手に入る韓国映画を片っ端から観始めた。

彼は当時16歳で、グリュイエールチーズの原産地であるスイスのフリブールで幼い頃を過ごした。隣人はみんな農夫であり、牛の首につけるカウベルの音で目覚めるような素朴な村で大きくなった。そのおかげで彼は映画オタクになったという。牧歌的な環境の中で、少し孤独な子供時代を過ごす間に映画が彼の友人となったのだ。12歳の時に彼はアイルランドに戻り、ダブリンの寄宿学校に通うようになる。そこでも自由時間には近くの映画館に通った。時代は1990年代で、アジアの現代映画が海外で注目を浴び始める時期だった。

執筆、放送出演、制作まで
コンランさんの韓国での生活を一文で説明するのは難しい。「基本的に韓国映画と関係のある仕事なら、何であれ関与しようと努力しています」と自ら簡潔に要約した。彼が好きな行事の一つである富川国際ファンタスティック映画祭が7月に開かれたが、今年は審査委員として参加した。

世界の映画ファンに韓国映画を紹介することがコンランさんの仕事だ。彼の仕事の中心となっているのは、映画振興委員会(KOFIC)のホームページ『KoBiz』の英語エディターの仕事だ。このサイトに深層記事やトピックを書いたり、コラムを投稿しており、もうすぐこれと関連したYouTubeチャンネルもホスティングする計画だ。そのほかにも文章を書き、制作し、英語のケーブルテレビ『アリラン』とTBSラジオ放送に定期的に出演している。また、主に独立映画を扱うカナダのウエブサイト『スクリーンアナキ(ScreenAnarchy)』に文章を書き、ロサンゼルスに本部のあるアメリカの映画制作配給会社の『XYZ Films』の営業にも関与している。映画制作は彼のもう一つの主要な仕事だ。

コンランさんは「独立映画の典型」だと言えるイ・サンウ監督の作品を制作している。イ監督は『母は娼婦だ』、『父は犬だ』、『私はゴミだ』のような作品で社会の暗闇を描いている。彼らの最近の共同作業は、2019年にホラーオムニバス『Deathcember』の一部として作られた作品だ。この映画には世界の何人もの監督が参加している。二人は2012年『シネマデジタルソウル映画祭』で初めて会い、イ監督が一緒に映画を作ろうと提案したのだった。

その当時コンランさんは、韓国映画界で名前が知られ始めた頃だった。ダブリン大学トリニティ・カレッジでフランス文学と映画学の修士課程にいた彼は、卒業する前の2010年に 『韓国現代映画』というタイトルのブログを始め、ブログに掲載する文や、ポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』に関する修士論文を書きながら忙しく過ごしていた。そのような努力の甲斐あって、彼はカンファレンスやいろいろな国際行事に招待され、発表するようになった。ブログはオンラインを通じて韓国映画ファンとつながる方法でもあった。その中の一人がダルシー・パケットさんだ。彼はポン・ジュノ監督のアカデミー受賞作『パラサイト―半地下の家族』の英語字幕を担当したおかげで今や韓国では誰もが知っている映画評論家だ。

パケットさんはコンランさんに韓国に来ることを提案したが、もはや説得する必要もなかった。なぜならコンランさんはすでに韓国旅行を考えていたからだった。2012年に韓国に到着した彼は、英会話スクールで英語を教え始めたが、数カ月も経たずしてKoBizのエディターの仕事を手に入れた。すべては実に迅速に展開した。

映画と関連した幅広い活動をしているピアース・コンランさんは、2020年7月に封切られたヨン・サンホ(延尚浩)監督の『半島』に、記者の役で出演した。© ネクストエンターテイメントワールド

さらに深く没入する
コンランさんはこのような急速な展開を運が良かったからだと言うが、映画に対する情熱と自他共に認める「マニアックな気質」がその根底にある。一言で言うと、彼の熱狂的な態度がチャンスをものにしたのだ。「熱狂的な態度がすべての方式で私の人生を好転させました。何よりもプライベートな面で、より一層そうですね」と彼は言う。

「運が良かったというのは言うまでもありません。時々、誰かが私の足の下のカーペットをさっと取り除いてしまうのではないかと心配してます。しかし正直に言えば、運が良かったのは、白人の西洋人が韓国映画に肯定的な意見を持っていたからです。それが私に有利に働いたと言えますね」とコンランさんは付け加える。

プライベートでのイ・ギョンミ監督との結婚も一役かった。ある新聞記事は、通常Kポップアイドルのファンが好きなアイドルと出会った時に使う言葉を引用して、彼を『ソンドク(成功したオタク)』だと称した。コンランさんは「私はキョンミさんの2008年の作品『ミスにんじん』の熱烈なファンで、次の映画を楽しみにしていたんです」と笑いながら言った。彼らはパーティで出会ったのだが、映画監督の友人がイ・ギョンミ監督を連れてきて「皆さん、この人がイ・ギョンミさんの新しいボーイフレンドです」と叫んだという。そのような当惑するような出会いにも関わらず(彼はただ腕を握ったまま「あゝ、アンニョンハセヨ」と言って突っ立っており、人々はそんな姿を写真に撮っていたと記憶している)すべては実に自然に進行し、二人は2018年に結婚した。

彼は自身の仕事をしながら、妻が映画を作るときには様々な方法で支援している。ネットフリックスが制作した4本の短編を集めた『ペルソナ』では、彼はイ・ギョンミ監督が担当した部分に出演しているが、Kポップスターのアイユーが主役を演じた主人公の少女のボーイフレンド候補の役だった。少女は彼にパパの新しい恋人(ペ・ドゥナ主演)を先に誘惑してくれたら、デートに応じるというものだった。俳優になる気は全くないコンランさんだが「私は映画のセットにいること自体が好きなんです。その水準で参加するのが私にはスリリングなことです」と言う。彼はヨン・サンホ監督の2016年のゾンビスリラー『新感染―ファイナル・エクスプレス』の続編で今年の夏に封切られた『半島』にも出演している。

未来に
コンランさんの目には、韓国映画に対する人々の態度がこの数年間で変化してきたが、今度の『パラサイト―半地下の家族』で決定的になったと言う。韓国映画の水準と独特な素材、そして高い制作価値は常にある程度国際的にも認められたと彼は言う。以前は韓国映画に対する賞賛に少々無理があったものの、だが今や本当に変わったという。「韓国映画は無限の可能性を持っています。全世界がジャンル映画を好む方向に向かっており、それが韓国にプラスに作用していると言えます」。さらにストリーミングサービスが勢いを増しており、新型コロナウイルスのパンデミックにより社会的な距離を維持するには、その方向に行くしかない。また韓ドラですでに証明されている韓国のエンターテイメント産業の力も、大きな利点となっていると彼は信じている。

韓国映画に対して彼が憂慮するのは、扱う内容の範囲が限定されているという点だ。「最近、プロットと音楽を見ると、私が見たり聞いたりしたものはすべてポン・ジュノとパク・チャノク、クリストファー・ノーランのような監督の方式を借用しているものです。15年前には失敗作も実験作も多く、それがまた非常に興味深々でした。今は映画があまりにも整い過ぎて、多くの映画が互いに似通っています」。曖昧な作品や強烈なメッセージ性のあるジャンル映画に惹かれはするものの、映画に対する彼の好みの幅は広い。『殺人の追憶』は、彼が一番好きな作品だ。彼はこの映画を『完璧な映画』だと評価するが、彼を虜にし韓国に導いた映画でもある。

彼が韓国映画で最も好きな部分は、彼が第2の故郷とした韓国に対して彼が感じている嫌いな点と関連がある。「私が最初に韓国に来た時、すべてのものに対して心ときめき興奮しました。すべてが良かったんです。それが突然、そのすべてが自分の生活になった途端に嫌いな点が生まれました」と彼は言う。彼の言う嫌いな点というのは、ビジネスの方法や家父長的な文化、様々な社会問題にある。「韓国映画が素晴らしい理由は、すべてのネガティブな要因、20世紀の歴史を通じて各世代の人々が経験しなくてはならなかった苦難と現代社会の病弊の解消に成功していることです。映画でそのすべてが扱われ、それが韓国映画を素晴らしいものにしているのです」。

こんな風にコンランさんの韓国に対する感情は時間とともに変わっていった。「結婚を通じて新しい家族に合流することになり、韓国に対する理解と愛情がより一層深まった気がします。また私の韓国語が上達するのにも役立ちました。もちろん速度が少し遅いんですがね」と彼は言う。

彼は今後制作の仕事をよりたくさんしたいと望んでいるが、そのためには韓国語がもっとうまくなる必要があることも分かっている。” 

完璧な映画マニアで熱烈なブルーレイ収集家の彼は、自分は好きな仕事ができて本当に運が良かったと考えている。「映画をものすごくたくさん観ます。本当にたくさん観すぎるんです。一年に800本ほどですね」と言いながら、自らもその数に驚いているようだ。そして微笑を浮かべながら「それが私の業なんでしょう」と付け加えた。

チョ・ユンジョン フリーライター、翻訳家
ホ・ドンウク 許東旭、写真
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