特集

宅配サービス-急成長するデリバリー業界の実情と課題 特集 1 実利と贅沢の狭間で

車の少ないソウルの道で、目的地に向かう配達員。渋滞のない道を安全に速く走るのが、デリバリーライダーの最大の願いだ。

またか…。朝起きてキッチンに行くと、テーブルにはタッパル(鶏の足の辛味炒め)とおにぎり。頭にきてゴミ箱の蓋を開けると、案の定、デリバリーの使い捨て容器がたくさん入っている。私が寝ている間に、子供たちがデリバリーで夜食を食べたのだ。リビングの壁の時計は、午前6時30分を指している。腹は立ったが、子供たちを起こすにはまだ早い。溜まっている仕事を片付けようと早起きしたが、すっかりやる気をなくしてしまった。

もったいないし、仕方がない…。私は残ったタッパルを電子レンジで温め、冷蔵庫からカクテキ(大根のキムチ)を取り出した。いくら不機嫌でもタッパルの味は格別で、おにぎりも私が作ったものより遥かにおいしかった。おいしいものを食べたからか、そうした状況がついさっきまでとは随分違うように感じられた。そうか。子供たちは、私の分を残しておいてくれたのだ。こっそり食べて完全犯罪を狙ったのなら、きれいに片付けたはずだ。おかげで、私は朝ご飯の準備をせずに済む。

タッパルで頭に血が上り、タッパルで機嫌が良くなった私は、生ごみを捨てるために玄関のドアを開けようとした。だが、ドアはなかなか開かない。力いっぱいドアを押すと、隙間から宅配の段ボール箱が見えた。何だろう。生鮮食品のようだが…。その箱を家の中に入れて、開けてみる。生食用のサーモンとソース、ステーキと下ごしらえした野菜、セウジャン(エビのしょうゆ漬け)まで! それらの料理は半調理の状態で、パックから出してソースをかけたり、電子レンジで温めるだけで食べられる。まったく、家で作れる料理まで注文するなんて…。

車の少ないソウルの道で、目的地に向かう配達員。渋滞のない道を安全に速く走るのが、デリバリーライダーの最大の願いだ。© gettyimages

不満と葛藤
私が20~30代の頃、時々食べる出前といえば、チャジャンミョン(韓国風ジャージャー麺)とフライドチキン以外には想像もできなかった。料理は当然、妻の役目だった。結婚して二人の子供を産んだ頃は、まだインターネットやデリバリーサービスが発達していなかったので、粉ミルクや紙おむつなどの生活必需品を買うには、毎週大きなスーパーに行くしかなかった。子供二人を車の後部座席に乗せて、スーパーではショッピングカートに座らせて買い物をした。カートに山積みになった商品をトランクに載せるのは、本当に大変だった。

そのため、米、コチュジャン(唐辛子みそ)、ミネラルウォーターのように重いものがインターネットで注文できるようになると、主婦の重荷から解放されたような気さえした。つまり、私にとって宅配は、スーパーの商品を家で便利に買うことを意味する。しかし、子供たちは違う。あらゆる種類の生活必需品だけでなく、料理までスマートフォンのアプリで注文する。最近は、行列のできる有名レストランの料理まで、クイック・デリバリーサービスで味わえる。チョッパル(豚足)、ポッサム(茹で豚)、コプチャン(牛の小腸)、トッポッキ(餅の甘辛炒め)、スパゲッティまで…。今や子供たちは「デリバリー時代」を存分に謳歌しているのだ。

だが、子供たちが有名な店の料理をデリバリーして、私に食べてみてと勧めるたびに、なぜか不満が募った。家で作ればお金を節約できるのに、なぜ高い配達料金まで払うのだろうか。つまりデリバリーが、私の場合は効率のための「選択」だとすれば、子供たちの場合は単なる「贅沢」だと思っていたのだ。そのため、私はデリバリーの料理を目の前にして、素直に喜べなかった。時には、自分が時代遅れのように感じられるが…。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、オンラインで注文した商品を玄関の前に「置き配」する非接触型の配達が、最近いっそう増えている。© gettyimages

朝ご飯があっという間に
届いた生鮮食品を見つめて、あれこれ考えているうちに、娘が部屋から出てきた。

「うわー。本当にすぐ届くんだ! お母さんに朝ご飯を作ってあげたくて、好きなセウジャンも注文したのよ」

娘は嬉しそうに話すと、きれいに下ごしらえされた野菜は洗ってバスケットに、ステーキはノンオイルフライヤーに、セウジャンは皿に移していく。

「毎日は無理だけど、たまにはこうやって朝ご飯、作ってあげるからね。時計のアラームもセットしておいたんだよ。このサイト、本当にいいでしょ? 他のサイトより少し高いけど、とっても新鮮なんだって。お母さんが食べるものだから、ちょっと高くても、特別に注文しちゃった。どう? 息子より娘の方が、頼りになるでしょ?」

娘は、私のために朝ご飯を作ることが、とても嬉しいようだ。その笑顔に向かって「まったく、朝ご飯までデリバリーするなんて!」と小言を言うことはできなかった。私は、しかめた顔を緩めて、わざと笑顔でテーブルについた。

「このセウジャン、普通のとは違うんだから。江南(カンナム、ソウルの繁華街)の有名な日本料理店のものなんだって。高いから、お母さんは絶対買わないと思って、私が注文しちゃった。これいくら、あれいくらなんて聞かないで、ただおいしく食べてね。分かった?」

私より私のことをよく知っている娘は、無駄遣いを怒られると思ったのか、先手を打って私を黙らせた。早く食べてと何度も言うので、その有名なセウジャンを口に運んだ。生姜が入っているのかピリッとして、しつこくなく生臭くもない。エビも口の中で溶けるようだ。

正直なところ、私は料理のデリバリーがあまり好きではない。しかし、一人で暮らしている人や料理が苦手な人には、合理的な選択かもしれない。
下ごしらえ、調理、後片付けの時間を節約して、他のことができるのだから。

家族の食事だけでなく来客へのもてなしも、料理のデリバリーが合理的だとの考えが、若い世代で広がっている。© Shutterstock

おかしな母親
無駄遣いをしたわけではなく、お小遣いを貯めて、私の朝ご飯を準備してくれたのに、それを断ったら、私は本当におかしな母親だ。こういう時は、とにかくおいしく食べないと。あれこれ並べられた料理を少しずつ味わっていると、携帯電話が鳴った。

「ミョンラン。包み野菜、送ってくれたの? そんなに気を遣わなくても…。最近、野菜は安いから、スーパーで買ってもいいのに、わざわざ送ってくれて…」 

仁川(インチョン)に住む一番上の伯母からだ。

「私も1箱買ったんですけど、注文を受けてすぐに箱詰めするから、とても新鮮なんですよ。スーパーでは買えない野菜も、たくさんありますし。伯母さんは、もったいないって、そういう野菜を買わないと思って、送ったんです。おいしく食べてもらえれば、それでいいんですよ」

私がそう言うと、伯母は「本当。こんな野菜、初めて見るわね。すごく新鮮だし。とても嬉しいけど、お金を使わせちゃって…」と申し訳なさそうに言った。伯母が何度もありがとうと言い、私が何度も大丈夫と答えて、ようやく電話が終わった。テーブルの向こう側でその様子を見ていた娘が、にっこり笑った。

「へぇ。お母さんもネットで注文、ちゃんとできるんだ」

「私だって、できるわよ」

私はチラッと娘をにらんでみせると、声を上げて笑った。



告白
正直なところ、私は料理のデリバリーがあまり好きではない。しかし、一人で暮らしている人や料理が苦手な人には、合理的な選択かもしれない。下ごしらえ、調理、後片付けの時間を節約して、他のことができるのだから。また食事の準備は、ほとんどが妻に一方的に任された家事労働なので、料理のデリバリーは女性の負担を減らして、家庭の民主化をもたらすかもしれない。夫は、自分の食事のために妻の手を借りず、食べたいものを注文すればいいのだから。

デリバリーは「利用原則」こそ世代ごとにまだ違いがあるが、今や自然な日常になりつつある。そうした新しい「文化」が、この時代をより良くすることを願いつつ、私は焼きたてのステーキを頬張った。

イ・ミョンラン 李明娘, 小説家
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