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2024 WINTER

イム・ヨンウンと英雄時代

イム・ヨンウン(林英雄)のストーリーには成功物語以上のものがある。彼の歌は単なる音律を越え、大衆の人生に癒しと勇気を吹き込み、ファンダムはその善良な影響力を世の中に広める灯になっている。彼らが作り出した暖かい共同体は、私たちに真の英雄が何なのかを改めて悟らせる。

イム・ヨンウンのファンはほとんどが中高年層だ。彼らはファンダム活動を通じてコミュニティを作り、ボンランティアや寄付を通じて社会に良い影響力を与えている。
© Mulgogimusic, CJ ENM

日本で新たに形成された大衆音楽の音楽的影響を受けて生まれた韓国の「トロット」は、「イム(思慕する人という意味)」と故郷を失った痛みとそれに対する郷愁を反映しているという理由で、当時多くの人々から大きな共感を得た。オックスフォード英語辞典には、トロットが韓国大衆音楽の一つのジャンルであり、韓国伝統唱法と日本、ヨーロッパ、米国の大衆音楽からの影響が結合したジャンルとして紹介された。浮き沈みを経験しながらもその命脈を失わなかったトロットは現在、韓国の代表的な大衆音楽ジャンルとして位置づけられている。

英雄の誕生

最近、韓国トロットの主流は断然イム・ヨンウンである。2016年のデジタルシングル『ミウォヨ(憎い愛)』でデビューした彼は、2017年、KBSの時事教養番組『朝の広場』の「挑戦、夢の舞台」で5連勝を果たし名を馳せた。2020年にはTV朝鮮のトロットサバイバルオーディション番組『明日はミスタートロット』で優勝し、本格的な最盛期を迎える。

その翌年に発売した『星明りのような僕の愛よ』がMBCの音楽番組『ショー! 音楽中心』で1位を獲得し、ダントツの人気を立証した。トロット曲が音楽番組でトップの座に上がったのは非常に異例なことである。

その他にも、韓国最大の音楽ストリーミング配信サービスであるメロンチャートで、BTSに続き2番目に累積ストリーミング100億回を達成したが、ソロ歌手としては初めてのことである。2024年8月28日に公開された彼のコンサートを記録した映画『IM HERO THE STADIUM』は、観客動員数357,858人にも達した。

創刊20周年を迎えたスターニュースが世論調査専門ギャラップ社と共に行ったアンケート調査では、「最も愛された21世紀のトロット歌手」部門で1位に上がった。強大なファンダムを抱え、いわゆる「イム・ヨンウンシンドローム」を巻き起こしているという点で、彼は他のトロット歌手とは格別化される。

歌手イム・ヨンムンのコンサート実況を撮影した映画『イム・ヨンウン アイム・ヒーロー・ザ・スタジアム』のポスター
© Mulgogimusic, CJ ENM

コロナパンデミックで全国民に社会的距離の確保が要請されていた当時、イム・ヨンウンの甘美で優しい歌声は、不安を抱く多くの人々の心を暖かく慰めてくれた。『明日はミスター・トロット』放送当時、リアルタイム国民投票総計7,731,781票数の25%という圧倒的な得票率を獲得していることから、彼の人気の程がうかがえる。一時的な流行かと思われたが、その人気は数年間持続するどころか、むしろ日増しに高まっていることから、到底一時的なシンドロームとは考えにくい。

その名が示すように英雄のような人生

イム・ヨンウンの登場は、その名が示すように「英雄」の誕生だった。苦難と逆境を乗り越えた彼の人生は、多くの人に優しさと共感を呼び起こした。イム・ヨンウンストーリーは、ヒーロー一代記とも似ている。

一般的に英雄の一代記は非凡な誕生、苦難と成長、助力者のサポート、危機克服の後に勝利者になる。この成り立ちと完璧に一致しなくても、イム・ヨンウンの人生はいわゆる英雄の一代記と相当類似している。

すべての英雄一代記に現れる苦難と逆境がイム・ヨンウンの成長過程でも確認できる。彼の最初の苦難は父親の不在から始まる。5歳の時に父を交通事故で亡くしたイム・ヨンウンとその家族は大きな試練を経験した。『明日はミスター・トロット』オーデイション当時、イム・ヨンウンは父がよく歌ったという「ペ・ホ(裵湖)」の1969年カバー曲『裏切り者』で大衆から大きな共感を得た上に、歌に彼個人のストーリーが溶け込んでいるという理由から、より大きな感動を呼び起こした。

それでも彼は、長い無名時代という苦難を経験している。業界であまり注目されず、経済的に厳しい状況にも置かれた。飲食店のバイトから工場やスーパー・コンビニに至るまで、手当たり次第アルバイトをしたにもかかわらず、1カ月の収入が30万ウォン足らずで、デビュー後も冬には焼き芋の商売をしながら生活したという。

そんな厳しい状況下でも、彼は音楽をあきらめずに情熱を燃やし続けた。苦難は成長の糧になり得るということを自ら証明し、バラードからトロットにジャンルを変えてオーディションプログラムに出演したことは、彼には冒険であると同時に成長のための踏み台でもあった。まるで「幸運は、用意された心のみに宿る」という格言を実証するかのように、彼はオーディションを通じて実力はもちろん、誠実で謙遜な態度が高く評価されて、大衆から愛される結果となった。

神話や伝説に登場する非凡な能力を持つ古典的英雄とは違って、現代の英雄はたゆまぬ努力と忍耐を通じて成功を成し遂げる。オーディションという競争原理の舞台でその実力を認められたイム・ヨンウンは、努力と情熱で成功を成し遂げた現代の英雄だと言えるだろう。

ここで特筆すべきことは、イム・ヨンウンの英雄としての飛躍に貢献した支援者だ。支援者の強力なサポートが大きかったのだが、その支援者とはまさにイム・ヨンウンのファンたちだと言えよう。

中高年層の支えとなる

彼の公式ファンカフェ「英雄時代」の会員数は20万人を越える。会員数だけではなく彼のファンはロイヤリティも高い。イム・ヨンウンのファンは他のトロット歌手のファンダムに比べて、割と各世代にわたって幅広い年齢層が均等に分布しているという特徴を持つ。もちろん主軸は50~60代の中高年層の女性たちである。中高年層の女性は更年期症候群や子供の巣立った後に覚える空虚感、「空の巣症候群」を克服する方法としてイム・ヨンウンを選択したのかもしれない。

誰もいなくなった空っぽの胸の中に、ある日訪れたイム・ヨンウンは人生を生きていく活力となり、支えにもなった。それは大仰な話ではない。実際の話イム・ヨンウンのファンの多くはいわゆる「推し活」を始めてからは、うつ病と不眠症が改善したと言う。これといった生きがいや楽しみがなかった彼らは、推し活をしながら自らの存在理由を自覚し、自分のように孤立した女性たちと連帯しながら、共同体づくりを実践している。孤立から連帯へ、疎外から共感へと進み、第2の人生を歩み始めたのである。中高年女性のメンタルヘルスだけではなく、すべての家庭の和解と平和に貢献したのだから、彼の業績はそれだけでも相当なものである。

もちろん、これはイム・ヨンウンのファンに限った話ではない。他の歌手のコンサート会場でたまに見かける中高年層の女性たちも応援するスターのために連携し、連帯する。だがしかし、イム・ヨンウンのファンはまずその規模の面で韓国1位を占めている。ところで、なぜ彼らは他の歌手ではなくイム・ヨンウンを選んだのだろうか?

2024年5月、ソウル上岩(サンアム)ワールドカップ競技場で開かれたコンサートの現場。このコンサートには彼のファン「英雄時代」メンバー約10万人が集まった。
© Mulgogimusic, CJ ENM

答えはイム・ヨンウン個人のストーリー性の持つ力にある。それに加えて彼が披露する歌とその姿勢が加わることで多くのファンの共感を得られたのだろう。従来のトロットに比べて、彼は悲壮感や悲劇を強調するために大袈裟なジェスチャーや過剰な感情を表に出さない。彼は淡々とした口調で語るように歌う。それがむしろ大衆に深い感興を呼び起こした。イム・ヨンウンのヒット曲「もう私だけを信じて」(2020)、「星明りのような僕の愛よ」(2021)の歌詞には男性を指す単語もなく、虚勢を張る男性も登場しない。曲や歌い方、ジェスチャーなどから「和やかな男性像」がうかがえるのだが、これがキーポイントとなった。

また、イム・ヨンウンのファンは寄付とボランティア活動を通じて善良な影響力を広めている。寄付といっても青少年自立支援寄付、障害者家庭への寄付、小児がん患児のための寄付とその種類は多岐にわたっていて、これが善良なファンダムの影響力だといわんばかりの様子を見せてくれる。

イム・ヨンウンの人柄と実力、そして彼を支持するファンが作り出す数多くの佳話は、まるで「世の中はまだまだ生きる価値がある」と、「だから生き抜いてみようではないか」と語ってるかのようだ。

イム・ヨンウンという名は、個人の成功を越え、より良い世の中を夢見る人々の希望の灯りとなっている。

チャン・ユジョン 張攸汀、音楽史学者、檀国大学校 自由教養大学教授

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